NAMIKIBASHI CONNECTION vol.7
- shinyasenoo
- 2018年5月23日
- 読了時間: 7分

れもんらいふ代表、アートディレクターの千原徹也によるラジオ番組『NAMIKIBASHI CONNECTION』。
並木橋で紡がれる様々な出会い。
ナビゲーターの千原徹也が、そこで生まれる「出会い」を通して、クリエイティブの世界を紹介します。
本日のパートナーは先週に引き続き、シンガーソングライターの吉澤嘉代子さんです。
楽しいことが一番
それに伴う〝純粋な苦しみ〟
千原
出会った頃と今では吉澤さんのイメージって全然違うんですよ。
最初の頃は、まだ外からの影響が強かったような気がして。
もちろん自分の意思もあるのですが、踊らされていた部分もあったのではないでしょうか。
「自分がやりたいことじゃないことがそのまま進んでいて、どうしよう?」みたいな。
今は本当に〝吉澤さんの世界〟でやっている、という印象ですね。
吉澤
鋭いですねw
仕事を続けていく中でどんどんやりたいことが増えていて、今は本当に好き放題やっていますねw
千原
先週も「ますますハードルが上がっていく」という話をしていましたが、「好きなことをやればやるほどより良いものにしなくちゃ」という部分もあるのはないでしょうか?
吉澤
作品の〝最初〟って初期衝動から生まれるじゃないですか。
でも、自分が成長をしていくとそこに対して興味がなくなったり、反対に大切にしようと思っても新しく好きなものが増えていったりしますよね。
それに対して、クオリティの面でもそうですが、情熱を自分の中に見出せなくなることもあって。
「これは自分がやりたくてやっているのか、それとも、作品をつくらなければならないからやっているのか」
うまく言えないのですが、どんどん「自分のためにやっている」ということではなくなってくる。
それに伴って「これってパッションなのかな?」という疑問を抱いたり、悩んだりする。
同時に、洗練されていくものがあって。
自己顕示欲が満たされたり、作品としてのクオリティは上がっていく。
そういうことも先週話した〝苦しみ〟だったりするのですが、「洗練されていくものを生み出せる」ということに対して喜びも得ることができる。
職人のように「極めていく」という方向へ進むこともまた多幸感がありますよね。
千原
なるほど。
吉澤さんの作品の中で『残ってる』という曲があります。
あの曲がきっかけで吉澤さんのことを認知する人も増えたと思うのですが。
『残ってる』のような「これぞ名曲」という作品がある中で、どのミュージシャンも次の曲を生み出していくこと苦労していると思うんですね。
そこに対しても「自分が自由になっていく」ということが大事なのでしょうか?
吉澤
千原さんが先ほど仰った〝踊らされていた〟という表現のことだと思うのですが、それまでは自分の想いではないところで動いていた部分はあります。
でも、『残ってる』をリリースした頃から「もう好きにやろう」と思いはじめたんです。
「自分がやらされてうまくいかないくらいだったら、自分がやりたいことをやってうまくいかない方がいい」と振り切れた気がします。
そうしたら、どんどんうまく回っていく環境に変わっていった。
千原
認知が増えれば増えるほど「みんな喜ぶにはどうすればいいんだろう?」と考えがちですが。
逆に自分らしくなっていったんですね。
吉澤
デビューの頃と比べると、そうですね。
千原
今のお話を聴いて共通点を見つけましたw
そこに関しては僕も同じです。
僕もね、つくればつくるほどどんどんわがままな作品になっているような気がします。
最初は「クライアントさんはどうやったら喜んでくれるかな?」とか「世の中の人が見た時にどう思うだろう?」ということを一生懸命に考えていた。
でもね、そういった「こうしなきゃいけない」ということを排除していった方が───言い換えると「自分がやりたいこと」を提案していった方がいい感じになっています。
それは確かに、自分自身がある程度認知されている───「千原さんってこういう人だ」というイメージがあるから成立することでもあるのですが。
それが吉澤さんの場合『残ってる』がきっかけになっていたりしたのかもしれませんね。
吉澤
そうですね。
自分が作者として欲望に向かっていったものが、世の中がうまく回る一つの歯車になったりするといいですね。
楽しくなって、やりたくなっちゃって「しょうがないから自分の好きなようにやる」というのが一番ですね。
千原
いいですね。
ただ、好きなようにやるということが実は一番難しかったりするのですが…
吉澤
確かにそうですね。
苦しいですね、すごく純粋な苦しみ。
本当に純粋な苦痛があるけれど、その分、喜びも伴うから。
千原
〝純粋な苦しみ〟
いいですね。
評価軸
千原
曲が完成した時というのは、作品ができた喜びと、人が聴いて「いいね」と言われた時とどちらの方が好きですか?
吉澤
実は、私はあまり人から「いいね」とか「悪いね」とか言われることが気にならないんです。
千原
そうですか。
エゴサとかはしないタイプですか?
吉澤
エゴサはします。
だけど「こういう風に世の中に受け止められているんだ」という参考くらいで、作品の良し悪しは自分の中で全て決まっています。
それが後になって揺らぐことはないかもしれません。
千原
じゃあ、周りからネガティブな声を聴いてもあまり関係がないという感じですか?
吉澤
「この曲、最高だから」
それで終わりです。
反対に、どれだけ「あの作品よかったよ!」と言われても、自分の中で「あの言葉はちょっと…」と思っていたら周囲の言葉通りに受け止めることはできない。
「いや、あれはダメなんだよ」って思っちゃう。
千原
なるほどね。
完成した作品の中で「もう少しこうしたかったな」ということもあるんですね。
吉澤
そうですね。
それを最小限に留めようと思いながら毎回苦しんでいるのですが、やっぱり残ってしまいますね。
一周するとそれもいいなって思えることもあるのですが、でもそこに至るには相当な時間が必要ですね。
夢を叶えてくれる人
吉澤
デビューさせていただいてからいろいろとやりたいことを叶えてきて、環境もだんだんよくなって充実してきていて。
こうやって過去を振り返ってみて気付いたのですが、それって千原さんの存在が大きいなって思うんです。
何もないところから「ああしたい、こうしたい」という閃きだけを千原さんに押し付けているのですが、千原さんは毎回叶えてくれていますよね。
それが結構無謀なことでもw
千原
「できません」とは言えないですからねw
吉澤
「難しそうだけどやってみましょう」と言ってくれて、実際にそれが叶ったり。
『女優姉妹』の発想も本来ならありえないことですもんね。
千原
なんかね、僕、むちゃぶりをしてもらった方がやる気が出るんです。
いつも半開きの目がクッと開くんですよw
例えば自分のデザインのイメージとは異なるものでも、「これをやれば自分にとっても新しいものになる」と思ってやっている。
それは朝鮮でもあるし、そして「次はどういう提案をしてくれるのだろう?」という楽しみでもあるんですけどね。
吉澤
会う度に思うのですが、千原さんってずっと全く変わらないですよね。
低体温動物のようにずっとテンションが一定で。
例えばお酒を飲んでいたとしても、酔っぱらっているのか気付かないくらい変わらないじゃないですか。
だけど、実はエネルギーがすごくて、そして情熱もすごくあって…
こちらが想いをぶつけると、その分、返してくれるという不思議な人です。
千原
分析してもらうと嬉しいですねw
千原映画の吉澤嘉代子
千原
実は僕には「映画を撮りたい」という夢があって。
構想もなんとなくあるのですが、吉澤さんに主題歌を歌ってもらいたいなぁ、と。
吉澤
うれしい。
うるっときちゃいますね。
千原さん、映画大好きですもんね。
千原
やるなら、音楽の部分でいうと僕が出会った中で最も大切な人にやってもらいたいんです。
それだけはぜひ忘れずいてくれたら、とw
吉澤
忘れないですよw
その時が来たら、全力で自分ができるハードルを越えていきたいですね。
来週もお楽しみください。