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箕輪ユニバース


シンプルな思考で、シンプルな言葉で、聴衆の心を掴む。

一貫するメッセージは「動け」ということ。

衝動に対する愚直なまでの行動力。

そのための武器が言葉───

自分の衝動に素直でいるためには、その衝動を理解可能な状態にする必要がある。

自分の衝動を的確に行動に移すためには、その衝動の本質を知らなければならない。

自分の衝動で周囲を巻き込むためには、それを伝えることができる形にする必要があるし、共有できる方法を身につけなければならない。

それらに共通する能力こそ「言語化」である。

絶え間ない〝動〟の中であらゆる現象、そして感情を的確に言語化していく。

〝今〟という時代を創る編集者、箕輪厚介の思考の本質に迫る。

 

箕輪ユニバースとは、大坂千日前にある味園ビル(味園ユニバース)で開催されたトークイベント。

幻冬舎の編集者であり、NewsPicksBOOKの編集長、そして参加人数1000名を超えるオンラインサロン『箕輪編集室』の主宰者、箕輪厚介氏が登壇し自身の編集哲学を語った。

モデレーターはこの会の主催者、MUSUBU結代表の寺嶋美穂氏。

この記事は箕輪氏の言葉を蒸留し、そのエッセンスを集めて形にした。

私が多くを語る必要はない。

箕輪氏の言葉は、そこにあるだけで、読者にエネルギーを与える。

それでは、お楽しみください。

※ブランド、概念として個人名を使用する場合は敬称略

箕輪編集室と箕輪の編集と。

箕輪

箕輪編集室がすごいのは、〝クリエイティブ集団〟としてトップレベルであること。

寺嶋

ライティング、動画、デザイン、それぞれ個別に特化しているわけではない、と。

箕輪

そう、全部一緒くた───ライティングも編集も動画もデザインも拡散も全て。

そこが良かったんだと思う。

僕がライティングや編集というパーツにこだわっていたら、このような組織にはなっていなくて。

だから「こういうことをやって欲しい」という注文が入った時に、僕たちだけで一括で担える。

そういうコミュニティは現地点で、世の中にはないからね。

寺嶋

具体的に文章に特化してお聞きします。

ライティングの技術を上げるためには何をすればよいですか?

箕輪

とにかく書くってこと。

量をこなした先に、そこではじめてオリジナリティが出てくる。

とにかく毎日書いて、ボツになろうが続ければ良い。

それはライティングも、動画も、デザインにしても同じだと思う。

経験の有無にかかわらず、自分の中に〝好き〟という感情のがないと、それは単なる〝作業〟になる。

どれだけ下手でもいいけど、〝書いている瞬間が好き〟ということが最も大切で。

超下手でボツになろうが、「楽しいからもう一回やり直したい」と思えるならばやればいい。

箕輪編集室の良いところは〝何かしら特技がある〟ということで。

クリエイティブに関して言えば、動画、ライティング、デザイン、編集。

それ以外でも経理やイベントプロデュース、それは単に〝盛り上げるのがうまい〟という人でもいいし。

色んな受け皿があるから、単純に自分の好きなことをやればいい。

そこで名を売って、僕なりがSNSで拡散して、世の中が注目して、自分の力で仕事を獲得していく。

それがベストなステップアップのルートだなって思う。

〈箕輪厚介〉

例外はいる。

でも、例外は例外だから。

箕輪

『※さよなら、おっさん。』というのがNewsPicksで話題になりました。

※マインドセットや価値観をアップデートせずに、未来を考えずに古いシステムにこだわり、新しい変化を受け入れない〝おっさん的概念〟に「さよなら」する、ということ。

NewsPicksのユーザーは一生懸命「年齢じゃない、年齢じゃない」って言っていて。

僕も「年齢だけではない」と思うのだけど、あの炎上騒ぎの後に佐々木さん(佐々木紀彦NewsPicks CCO)と話して「ぶっちゃけ、年齢ですよね?」って訊いたら「そうですね」って。

僕だって「今から勉強して動画をつくる」ってなかなか思えない。

若い人の方が、明らかにフットワークが軽いし、スタート地点の環境や社会状況も違う。

みんな怒るから公然では言わないようにしているけど、一部の例外を除いてやっぱり若い人は強いよ。

例外は例外だから。

寺嶋

私たち大人は「若い人と一緒に何かをする」ということが大切なんですね?

箕輪

全くそう。

僕たちがやることには、今まで培ってきた〝過去の成功体験〟は要らない。

そんなもの通用しないから。

そうではなくて、人脈。

それこそNewsPicksを紹介したり、ONE MEDIAを紹介したり、落合陽一を紹介したり。

圧倒的な人脈力、あとは資金力、そして影響力。

それをガンガン上げるだけ。

ビジネスパーソンの寿命もサッカー選手と同じくらいだと思うよ。

30歳を超えたら厳しくなってくる。

それはビジネスマンとしての考え方次第だけど、クリエイターという意味ではやはり若い人の感性の鋭さに投資していくべき。

秋元康や見城徹がなぜすごいのかというと、下の世代である前田裕二や箕輪厚介を買っているところが理由の一つとしてある。

前田裕二の才能を認めて、秋元さんが一緒に事業をしたり、僕の場合それが見城さんだったり。

「コイツは可能性がある」と思った人間を、手なづけて、放牧して、ちゃんと骨を咥えて帰って来たら、よしよし褒める、という。

オンラインサロンで考えると、「若くて才能がある人をどれだけ自由に遊ばせてあげて、色々なものを提供できるか」というところが勝負のような気がする。

寺嶋

多くの人は保身のために若い人に対して批判的な態度をとってしまいますよね。

箕輪

そうだね、でも確実に言えることは〝若くて、変化を好む人が強い〟

新しい環境に適応する人って、転職経験が多かったり、〝変わる〟ということに慣れている。

〝同じ場所にずっといる〟というのはそれだけで環境を取りまく思想が強制されるからね。

「これが正しい」という全く無意味なもの───会社の独特の文化のようなものに完全に染まってしまうということは避けた方が良い気はするけどね。

〈寺嶋美穂〉

寺嶋

幻冬舎といえば〝固い会社〟というイメージがあるのですが、ルールに捉われず「自分はこうやりたい」ということをどのように認めさせて(納得させて)いかれたのでしょうか?

箕輪

要因は二つあって、性格と結果

僕は〝その他大勢じゃ嫌〟という性格だから。

それに加えて、結果を出せば誰もが黙る。

人の10倍仕事して、何10倍もお金を稼いできているから、誰も何も言えない。

例えば、僕が手を抜いた仕事をしながらテレビの情報番組に出演していると、社内外で「箕輪は嘘だよ」ってみんなが言うと思うのですが、実際に相当な仕事量をこなしているから誰も何も言わない。

カラクリなどなくて、しっかりと押さえるべきところを押さえているというのが一つ。

単純に量だけではなく質の問題でもあって、その会社の中で弱い領域をしっかりと補強するということは大切です。

例えば、幻冬舎でいうと、今でこそビジネス書のイメージがありますが、僕が入社する前はその点が弱く、どちらかというと見城さんの力で芸能人によるタレント本が圧倒的に強いという印象です。

ビジネス書と同様にwebに関しても弱かった。

そこで、その2つの面(ビジネス書とSNS)を強くした。

みんなが放ったらかしにしている領域───強力なエースのいない場所でガンガン活躍しはじめると誰も何も言えない。

そこは大事かな、と。

寺嶋

空いたスペースで自分が活躍できることを見つける。

箕輪

それも自分が好きな分野でなければ意味がない。

僕の場合、たまたまネットが得意だったから、そこがハマったというのがありましたけどね。

言葉を洗練させるために必要なこと。

寺嶋

『箕輪大陸』(箕輪厚介主演のドキュメンタリー映画)もそうですし、箕輪さんの作る本もそうですけど、タイトルの付け方が重要だと思っていて。

心に刺さるようなタイトルの付け方についてお話聞かせてもらえますか?

箕輪

量を経験していくと世間の反応は分かってくる。

結局人が反応するのは〝共感〟か〝反感〟だから。

Twitterを見れば顕著に現れているよね。

共感してリツイートする人と反感で炎上する人がいて、それでバズっているわけだから。

共感と反感が50:50になる言葉が一番良い気がする。

堀江さん(堀江貴文)の『多動力』でも「電話をかけてくる人間とは仕事をするな」っていう言葉って、共感と反感がちょうど50:50くらいだと思っていて。

若い人は「その通りだ、電話は面倒だ」って思うけど、上の世代の人は「電話しちゃいけないの?ふざけんなよ」という反感があって。

せめぎ合うようなキャッチはそれだけで論争を呼ぶ。

今の時代「論争自体がPRになるので売れやすい」ということはありますよね。

今の世の中って、人の感情を逆なでしないようにする人が多くて。

逆なですることが目的になるのは間違いなんだけど、「自分はこう思う」ということを発信して、それが結果的に良いキャッチになっているというのが健全のような気がする。

寺嶋

難しいですよね。

箕輪

難しくないよ。

要はバズとかを狙う必要はなくて、本心にある独り言のような───メッセージだよね。

人の目、家族の目、クラスメイトの目、同僚の目、会社の目を気にせずに「自分はこう思う」ということを言い放つことが大切だと思う。

それがたまたま世の中の、ちょうど良い4割の支持を受ける人が、〝時代の寵児〟とか〝ヒットメーカー〟とか言われたりしていて。

そこに正解も不正解もないんだよね。

それがたとえ2割でも、1割でも、それこそ100人でもいいと思っていて。

〝世の中〟という大きなものには全く伝わらないメッセージであっても、100人が極端に共感すればそれがビジネスになる。

それがこれからの時代だと思う。

大切なのは「自分はこう思う」ということを発信する勇気。

そして、その言葉が洗練されたものであるかどうか。

寺嶋

どのようにして洗練させるのでしょうか?

箕輪

よくあるのが「何を言っているのか分からない」というもの。

それは土俵にも上がっていないよね。

「これは良いと思うのだが、これはこうで、こうで……」と文章だけが長くなり結局何が言いたいのか分からない。

ちゃんと身を切って、右なら右、左なら左。

予防線を張らずに「私はこう思う」ということをしっかりと言葉にする。

その言葉の美しさや切れ味の良さが人の心に届くためには必要かもしれない。

寺嶋

特に今はTwitterなど、短い文章でのコミュニケーションが多く。

それをあえてブログを書いたり、本を書いたりする中で、長い文章を読んでもらうということがより難しくなってきていると思うのですが。

箕輪

難しいね。

僕はほとんどの人は本を読んでいないと思っています。

読んでいたとしても読了率は50%以下だと思っていて。

だからそこは意識して〝読み切らせること〟を念頭に本づくりをしていますね。

あとは〝行動を起こさせる〟

NewsPicksBOOKというレーベルはそこに主眼を置いています。

今最も輝いている人の〝爆発の瞬間〟みたいな。

100年経っても変わらないという普遍性は実はどうでも良くて。

今この〝瞬間〟にある絞り出した声を記録する。

それも30分や1時間で読むことができて、「よし、今日から変わろう」という読後感のあるもの。

僕がつくるモノの役割は、この迸る熱を届けることで〝行動を変えさせる〟ということ。

「名著と呼ばれる本と比べて箕輪の本は読みやす過ぎる」とか色々言われるのですが、「全部オレに言わないでよ」って思っていますwww

編集者なんて日本に何千人といるわけだから、僕のようなスタイルの編集者が一人いてもいい。

寺嶋

心地の良い文章とは何でしょう?

音がポイントなのか、語尾がポイントなのか。

箕輪

リズムだよね、本一冊の。

重要なことでも、リズムを崩すなら省くべき。

一つの流れとして、「このポイントのテンションが低い」というなら省くし、反対に上がり過ぎていてもリズムを崩す原因になる。

編集者って映画監督みたいなもので。

役者が良い演技をしていても、映画という作品全体を見た時にその演技が突出し過ぎていても邪魔になったりする。

今までそうでもなかったのに、突然迫真の演技が入ってきたら、観客の心は離れてしまう。

だからそういったリズムを崩す部分は強引にでも省きます。

でもそれは〝箕輪厚介〟という名前をみんなが知っているから許してくれるものであって、他の編集者はそこまでやらないとは思います。

困っているのが、僕への批判で。

「箕輪は書き過ぎ(編集し過ぎ)」というものと「箕輪はプロデュースばかりで編集をしていない」という批判。

僕からするとどっちもやっているので「知らないよ」というのが正直なところなのですが。

まず、「編集をやっていない」という批判の理由はビジネス書の編集者がこんなに毎月ヒットを量産できるわけない(そもそも一人の編集者が毎月本を出せるわけがない)、という。

「箕輪はプロデューサーであって、編集者は別の誰かがやっている」という。

一方で「あの本は箕輪が全部書いている、そんなのおかしい」と言われたり。

僕はシンプルに、その本において必要な役割を果たしているだけ。

つまり、落合陽一という原石であれば僕が書き直す必要はなくて、ありのままを出した方が良いから自分はプロデューサーに徹して、この作品をどのようにして一般に広げるかという売り方を考える。

でも堀江貴文や田端慎太郎であれば、エッジの立たせ方や文章のリズムが大事だから、それはほとんど僕が書く。

この本が世に出る時に一番良い形は何か、というのを全部やっているだけ。

要は適材適所やっている、ということ。

寺嶋

良い形を考えれば、〝編集〟という役割に捉われる必要はない、と。

箕輪

売れるというのは結果論で、そこには「売れたい!」という想いはなくて。

一番広く届いて、一番深く刺さる形はどうかっていう。

書籍というメディアの本質。

箕輪

本ってさ、書かれていることって大体同じでしょ?

確かに〝発想が根本から変わった〟っていうのもある。

それが〝堀江貴文〟なのか〝落合陽一〟なのかは分からない。

いわゆるサラリーマン的思考から脱するという本はある。

でも、その本に一冊出会ってしまえばあとは大体同じなんだよ───それを発するキャラが違うだけで。

「こういうアイディアがあれば成功する」みたいなものってwebメディアでもアナログの世界でも既に溢れていて。

前田裕二だろうが、佐藤航陽だろうが、ここにいるNewsPicksを読んでいる大学生だろうが知識量は変わらない。

堀江さんを見ていても言っていることはずっと同じ。

しかも、思った瞬間にツイートするからすぐに共有される。

いわゆるトップの起業家と学生の持っている情報量は変わらない。

では、何で差がつくのかというと〝鬼のように動いているか〟ですよ。

例えば、堀江さんが「ビットコインが良い」と言葉にした瞬間に、同じ速度でビットコインを買えるか───それができれば堀江さんと同じなんです。

要は行動するかどうか。

だから〝名著〟と呼ばれる本質を伝える本というものの価値は確かにあるけれど、今という時代はTwitterをフォローしたり、NewsPicksを読んでいれば大体手に入る。

わざわざ数ヵ月遅れで本を読む必要はないでしょ?

正解は分かっているのだから、あとは動くだけ。

寺嶋

でも多くの人は動けない。

箕輪

動けないと思う。

だから動く人が勝つんです。

寺嶋

一歩踏み出すためにはどうすれば良いでしょうか。

例えば、箕輪さんであれば応援したい人に具体的にどのような声かけをされますか?

箕輪

声はかけない。

それは自由だよ。

確かに〝動けば成功する〟というのは正解なんだよ。

リターンは返ってくるし、好奇心もますます活発化するし、良いことはたくさんある。

ただ、ボーっとしているのも人生だから、そこを否定する必要はない。

自分のタイミングに合った時にがんばればいいだけで、強制されてやることでもないからね。

今の日本は何をやっても生きていける社会───餓死することもない。

切羽詰まって生きていく必要はないけど、情報は溢れているから、頑張って動いていれば、いずれは芽が出ることは間違いない。

寺嶋

箕輪さんは才能溢れる著名人とお仕事をされていますが、それらの人の特徴を聞かせていただけますでしょうか?

具体的に注目される人の行動パターンというものがあれば。

箕輪

そういう意味では僕は編集者の中では特殊な立ち位置かもしれません。

〝売れる〟ということ自体に興味がない。

単純に僕の好きな才能が最も過剰な状態で一気に爆発する瞬間が見たいだけなんですよね。

だから「こうやったら売れる」ということを考えたことがないの。

僕が「おもしろい」と思う才能が、ビンビンに発熱している状態で世に放って、それが売れようが売れまいが、称賛されようが酷評されようが、どうでもいいの。

そういう意味では「僕はベストセラーを出したい」とか「本を出したい」とか言っている人とは基本的には仕事はしないんです。

本をつくることが目的化している地点で興味がない。

堀江貴文や落合陽一のように変テコなまま生きていて、それをこちらで「本にさせてください」という姿勢のものでなければ。

実際、彼らも本を書こうとは思ってはいるけれど、基本的にそれが主目的ではないですよね。

勝手に生きて、勝手に変テコになっている。

彼らの100%の変人性をそのまま切り取って、世の中に投げ込んで、その波紋を見たいと思っているんです。

「ベストセラーを作りたい」とか「どうやったら本を出せますか?」とか、よく言われるのだけど、正直〝本を出したい人の本〟なんて僕は読みたくはない。

同じ意味で、〝本を批評するための批評〟というのも読もうと思わない。

批評を書くことを仕事にしている人に向けて僕は本を作りたいと思ったことは一度もない。

僕の本は「今、何かを求めている人」に届いて欲しい。

〝目の前の敵を倒すための武器〟のような役割として。

つまり、実践的なもののために作りたいと思っています。

箕輪厚介の本質。

寺嶋

編集者としての能力に加えて、箕輪さんのモデレーターとしての能力にも私は惹かれるのですが。

聴き手に腕が無いとつまらない対談や本になると思うのですが、〝話の引き出し方〟について聞かせてください。

箕輪

そこはしっかりと考えます。

〝目次をつくること〟───「この目次だと売れる」という目次を作る。

寺嶋

スタートとゴールはあらかじめ決まっている。

箕輪

決まっている。

大事なの「この目次通りにインタビューすれば売れる」というくらい用意するのだけど、インタビューの現場ではできるだけそこから脱線すること。

つまり、用意した目次ではない〝本質〟に気付けるかということ。

『多動力』を例に挙げると、

「これからの人生は多動力が必要になる」という高城剛さんのTwitterを見て、「堀江さんに『多動力』というタイトルで本を書いてもらったら売れるな」と思った。

目次を作っている段階では、マルチタスキングスキルのような、あれもこれも同時に行う───電話しながらメールもして、その時間の中でインタビューに答えて…というような〝業務を同時並列に行う力〟のことだと思っていたんです。

でも、実際にインタビューをしているうちに「あ、これは違う」と気付いた。

「〝多動力〟というのは、本質的に何もやらないことなんだ」ということに。

「この時間、何?」というのが堀江さんの口癖で。

サイン会でも5秒待たされただけでムッとしているのですが、飲みに行くとくだらない話を延々していたりするんですw

「堀江さん、飲んでいる時間はくだらない話ばかりで長いじゃないですか」って聞いたら、「箕輪、違うんだよ。要は体感時間なんだよ」って。

つまり、楽しければ、それが何十時間あっても良いけど、無意味な時間は一秒たりとも過ごしたくない。

そこで「秒単位で移動しているというのは本質じゃない」って気付いた。

だから最近の堀江さんを見ていると、肉を切ったり、水鉄砲で闘ったり、祭りをしたり、ミュージカルをしたり、一見意味のないことが多いのよ。

でも、楽しいからいいの。

彼の行動基準は全てが〝楽しいorつまらない〟、もしくは〝意味があるor意味がない〟。

そこで「あ、これって単純に効率化の本じゃない」と思って。

なぜ堀江さんが楽しいことに集中できるのかというと、楽しくないことをしないと決めている。

つまり堀江さんは自分が詳しくないことは全てアウトソースして自分の時間を作っているんです。

例えば、本に関してであれば僕だったり。

信頼できるアウトソーシング先を複数持っているから、常に彼は瞳をキラキラさせて楽しいことばかりを追いかけている。

だから「〝多動力〟とは何だ?」というと、〝多く動く力〟ではなく〝他人に動かす力〟なの。

タドウリョクの〝タ〟は〝多〟ではなくて〝他〟でいいくらい。

あの本にはマルチタスクキングのようにあれもこれもやるっていう内容ではなく、あくまで無意味なことはやめろっていうことを中心に書かれてある。

「手作り弁当はやめろ」とか「電話は要らない」とか。

無意味なことを削ぎ落して、本当にわくわくすること───バーベキューでも、海で泳ぐでも、何でも良いんだけど、そこだけに一点集中させろっていうのが〝多動力〟なんだっていうのは目次を立てる段階では気付かない。

そうやって自分の意識や考えが変わっていくと良い本になる。

目次を作ってからインタビューするのだけど、インタビューがあまりに画一的になると予定調和の本になるので、リラックスした空気でゆるいことを引き出せる方が本質に気付くことができる。

だから僕が心がけているのは〝友達と喋るような空気〟

新人の頃は誰もが緊張する。

それこそライターになって最初に驚くことは、思いもよらないはやさで大物にインタビューをする機会を与えられたりする。

怖いのは、堀江さんやキングコングの西野さんが「最悪のインタビューだった」ってツイートすることで、一瞬でライター人生が終わったりするじゃない?ww

そういった地獄のようなこともあるのだけど。

僕にも当然、似たような失敗はある。

だって分からないもの。

だから初期の頃、意識していたのは〝徹底的に準備をする〟ということ。

取材相手のあらゆる本、あらゆるインタビュー、あらゆるテレビ番組、SNSでの発言を全て見て、今世の中にある知った上でインタビューに臨む。

インタビュー項目も完璧に準備する。

それは最低限の話。

これができていれば、どれだけインタビューが下手でも相手を怒らせたり「お前は最低だ」と言われることはない。

質問の型が決まり過ぎていて「コイツ固いなぁ」と思われることはあったとしても、失礼だと思われることはないからね。

でも「それツイート見たら分かるよね」っていうことを訊いてくるような相手には、途中で喋る気をなくすから。

〝まずは世に出ている情報は全て知っておく〟というのは必要最低条件だね。

僕も、最初はインタビューがうまくもなんともなかったし、どちらかというと「色々準備して頑張り屋さんだけど、固いよね」っていうイメージだったと思う。

ただ、それだと過去に出た内容以外引き出せない。

だからどこかで崩していかなくちゃいけない。

大事なのは、完璧なインタビュー項目を作っているのだけど、インタビューの直前にそれを白紙に戻して、友達と話すように喋るということ。

今はもう慣れたので、脱線し過ぎたら話を戻すということができるようになったのですが、最初はなかなか難しい。

でも、項目をしっかりと作り込んでおけば、強引かもしれませんが話を戻すことができる。

ある種、相手のガードを外してあげるということが大事。

そうすると他のインタビューでは話さないことを喋ってくれる。

「真っ当なことをやれ」

ただそれだけで、意外とからくりなんてないんです。

寺嶋

箕輪さんって人に好かれる能力にはいつも感心させられます。

箕輪

だから、とりあえず相手に「コイツ、徹底的にやってきたな」と思われることだよ。

サイバーエージェントの藤田晋さんを取材した時は、アポの3時間前に近くの喫茶店に入って、自分の用意したインタビュー内容を、何度も何度も頭の中で繰り返しシミュレーションして。

「藤田さんのことを全て知っている」というレベルまで調べて、インタビューに臨んだ。

インタビューを終えてサイバーエージェント社を出た瞬間にお礼の手紙を書いて、最寄りのポストに投函した。

翌午前には届くようにね。

それくらい徹底した。

だから、今の僕のスタイルを見て、そこに憧れて同じことをやるのはちょっと違うと思うよ。

僕は見城さんに対しても、藤田さんに対しても、一滴の水もこぼさないほどの繊細さで徹底的にやっていたから。

自分で言うのも何ですが、そんな人物というのもなかなかいないから勝手に話題になるよね。

「あの箕輪って奴、知ってる?」って。

でも、それって実は大したことではないの。

だって、藤田さんをインタビューできるなんて幸せなことですよね。

準備をするのも楽しいし、帰りに手紙を書くことも、そこには全く義務感なんてなくて。

どちらかというと鼻歌を歌いながらやっていることなんだけど。

でも、そういうことすら実際に行動する人間はほぼ一人もいないんだよね。

 

箕輪氏の言葉は常にシンプル。

誰もが知っている言葉で聴衆の心を熱狂させる。

世の中に投げかけるビビットな問題提起によって、日常的に大きな波紋をつくる箕輪氏だが、実際の彼の口から紡がれる言葉はあたたかかった。

それは内容の温度も、声の質感のやわらかさも。

箕輪厚介を知ることは、まさに〝今〟という時代を知ることに繋がる。

ムーブメント、もっと言えば時代を創造する男の今後が楽しみで仕方がない。

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